研究成果報告書(概要)

平成20年度 第27回

研究課題
ポリプロピレン系複合材料の特異的劣化挙動の解明
研究者所属
北見工業大学 工学部 化学システム工学科 准教授
研究者氏名
中谷 久之
研究期間
平成20年4月1日から平成21年3月10日まで

報告書はこちら(PDF74KB)

研究成果 概要

和文

 約1年間の耐候性試験を行ったポリプロピレン(PP)/talc試料において、その表層部分は劣化のため脆性化していたが、表面から約700μmの深さの領域においても、所々に同様に脆性化している部分が観察された。我々はこのように光が届きにくい部分でおこる不均一な劣化はtalcによる劣化促進作用と関わりがあるのではと推定し、使用したtalcの蛍光X線測定を行った所、主成分であるMgとSi酸化物の他にCaやFe酸化物が観測された。これらの中でも特にFeは光・熱酸化の両方を促進する作用が大きいことが知られている。そこで、PP,PP/talcおよびPP/Fe2O3の各試料を使って熱酸化劣化し、IR測定により1715cmのカルボニルピークが観測される時間を各温度毎に測定してアレニウスプロットを行った。その結果、PP>PP/talc>PP/Fe2O3の順で傾きは小さくなり、劣化の活性化エネルギーが低下することが分り、Talcの不純物成分であるFe2O3の存在は特に劣化の活性化エネルギーを下げる働きがあることが確認できた。以上の結果から不均一な劣化挙動にFe成分の存在が関与していると推定し、これを直接確かめるために偏光顕微鏡によるPP球晶の観察を行った。方法としては、異物や変質による光の透過の遮断やクラックの発生に基づく偏光性の消失から発生する黒色部分を観測することで劣化の進行挙動の直接観測を行った。なお、熱酸化温度としては、PP単独では劣化が観測されない温度である100℃で行った。その結果、劣化時間24時間後では、球晶内に放射状にFe2O3の黒点から黒色部分の発達が観測された。これら放射状部はラメラ間に存在する非晶部に相当すると考えられることから、Fe2O3の存在下では、PP単独では劣化が起こらない比較的低温においてさえ、非晶部では劣化が起こることが分かった。
 さらに、不均一な劣化挙動とFe成分の関係を明確にするためにエネルギ一分散型X線分析装置付き走査型電子顕微鏡を用いてFe2O3周りのミクロな劣化挙動の検討も試み、劣化の開始がFe2O3粒子から数μm離れた所で起こることが明らかとなった。この奇妙な劣化挙動は、FeがTiやCrの例と同様に、PP酸化物の分解を促進するおよび、ラジカル生成物を安定化させる2つの作用を有しているためと推定した。

英文

 A heterogeneous degradation was observed at some inner areas in the polypropylene (PP)/talc composite plate weathered for one year. In the study on the microscopic thermal oxidative degradation of the PP containing Fe2O3 by the scanning electron microscope/electron dispersive spectrometer analysis, the PP spots in the vicinity of the Fe2O3 grain were unoxidized, and the higher oxidized PP spots were microscopically away from it in the initial degradation process. It was found that the degradation was initiated at some place microscopically away from the Fe2O3 grain so that the Fe2O3 has the both abilities to accelerate the decomposition of the PP hydroperoxide compounds and to reduce the produced radical species to non-radical products.

お問い合わせはこちらまで

公益財団法人
スガウェザリング技術振興財団 事務局
お問い合わせフォーム

  • TEL:03-3354-5248
  • FAX:03-3353-4753
ページの一番上に戻る