研究成果報告書(概要)

平成21年度 第28回

研究課題
安定剤の分散状態の最適化に基づくポリオレフィン系材料の高安定化
研究者所属
北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科 助教
研究者氏名
谷池 俊明
研究期間
平成21年4月1日から平成22年3月31日まで

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研究成果 概要

和文

 汎用プラスチックであるポリオレフィン系材料のリサイクルやリユースを可能にする長期安定性の向上は来るべき循環型社会において急務である。申請者は「新規安定剤の開発による安定性の向上」という従来方針とは全く異なる、「高次構造の設計による安定剤の作用効率の向上」という新しい素材設計指針を掲げ、高次構造中における安定剤の分散状態の解明、劣化時における作用効率との相関の解明、安定剤の作用効率の最適化を目的とした1年間に渡る研究を行なった。
 PPを指定量の安定剤と溶融混錬したフィルムを成形し、140、100、30、0℃でクエンチした後、140℃でアニールすることで結晶化度が揃った球晶構造の異なるサンプルを調製した。
 球晶構造の異なるサンプルの安定性をケミルミネッセンスアナライザーで比較した所、安定剤を含有するサンプルでは球晶が大きい程、材料の安定性は低下し寿命差は3倍にも及ぶことがわかった。一方、安定剤を含有しないサンプルの安定性が球晶構造にほとんど依存しないことから、球晶構造は安定剤の作用効率に何らかの重大な影響を与えていることが明らかとなった。
 球晶構造と安定性の作用効率との相関を明らかにする為、赤外分光イメージングを用いて材料中の安定剤の分散を調査した。安定剤の分散は、その種類によらず球晶スケールで常に不均一であった。つまり、球晶構造が大きくなるほど安定剤の分散の不均一性が拡大し、結果として材料の安定性が低下するものと考えられた。同様に、拡散や揮散と言った安定剤の動的な挙動に対しても高次構造が重大な役割を果たすと推測され、調査が必要である。
 最後に高次構造が安定剤の存在状態を通して材料の劣化挙動に影響する様子を解明した。安定剤を含有しない場合、劣化は至る所で容易に発生・拡散し球晶構造によらず均一に進行することがわかった。一方、安定剤を含有するサンプルでは、安定剤の働きによって劣化の発生・拡散が著しく抑制された結果、球晶界面で発生した劣化が球晶の縁によって形成される特定の界面に沿って進行し、材料の劣化は著しく不均一になった。球晶が大きい程、化学的に強度の弱い界面が形成され、劣化開始要員となって材料の安定性を低下させることがわかった。
 以上、ポリオレフィン系材料の長期安定性の向上に関して、非常に重要な新知見を複数得ることに成功した。

英文

 In order to establish a new strategy for long-time stabilization of polyolefin-based materials, the present research was conducted with the purpose to elucidate the dispersion state of stabilizers and its role on the degradation in terms of the higher-order structure of polypropylene. It was found that the stability of polypropylene was greatly affected by the spherulite structure through the effectiveness of stabilizers. Further research revealed that the dispersion of stabilizers was not uniform at a spherulite scale, and chemically weak boundaries formed between spherulites dominated the stability of the whole material.

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