研究成果報告書(概要)

平成23年度 第30回

研究課題
文化財絵画に経年析出する無機結晶物質とモデル系の化学研究
研究者所属
東京理科大学 理学部第二部 化学科 講師
研究者氏名
秋津 貴城
研究期間
平成23年4月1日から平成24年3月31日まで

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研究成果 概要

和文

1 
明治時代の油彩画修復のための地塗り層分析
文化財美術品保存の重要課題の一つに損傷した油彩画の修復がある。しばしば、結晶状の無機物質が長年の経過で絵図表面に析出する損傷が問題となる。無機物質混合物の主成分は重金属であるが、絵画の各部から採取した無機結晶物質の結晶外形や組成を調べることも重要である。そこで本研究テーマで は、EPMA, UV-VIS吸収・蛍光分光,IR分光などの手法を用いて、絵画の地塗り層だけでなく、顔料、表面に析出した無機結品物質について、外形・色彩・化学成分の分析を行い、いくつかの明治時代の日本で描かれた油彩画についてデータを得ることができた。
2 
「さび」の除去のために金属イオンと錯形成が可能なキレート試薬のモデル系
絵画を対象とする保存科学において、特定の金属イオンと錯体を形成するキレート試薬が、長年の経過により生じた(金属酸化物を主成分とする)さびを絵画の表面から除去して、無機顔料等の本来の色彩を復元するために用いられている。ところが、多成分が混合されている実際の絵画中では、予想しない化学反応が起こることがあり、化学的な意味でよほど注意しないと修復剤が使用できない場合がある。そこで本研究テーマでは、モデル系として1,2-シクロヘキサンジアミン・キレート試薬で錯形成した銅(II)イオンを生成させ、代表的な青色無機顔料であるプルシアンブルーの成分であるフェロシアンイオンと水中で混合し、銅と鉄(II/ III)イオンを含むモデル錯体を得た。この際に、鉄(II)イオンが部分的に鉄(III)イオンに酸化される。色彩や酸化数に対する水の同位体効果なども検討した。

英文

 One of important aspects of modern art conservation may be repairing damaged old oil paintings. Some of them suffer from damaging by crystalline inorganic substances precipitated after long years. Main component of the mixtures of inorganic materials is heavy metals. It is also necessary to confirm morphology and composition of the inorganic crystalline materials taken from various parts of the paintings. In this study, we observed morphology and analyzed chemical deposition with EPMA and measured UV-Vis, fluorescence, and IR spectra for several inorganic materials of ground layer especially (and pigments and surface crystal for comparison) exhibiting novel features taken from some old Japanese oil paintings.

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