研究成果報告書(概要)

平成24年度 第31回

研究課題
ケルビンフォース顕微鏡による低合金鋼の塗膜下腐食機構に関する研究
研究者所属
東北大学 大学院工学研究科 助教
研究者氏名
菅原 優
研究期間
平成24年4月1日から平成25年3月31日まで

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研究成果 概要

和文

 鋼材には多くの場合塗装による防食処理が施されているが、疵部や切断端面などの巨視的な欠陥部から塗膜下腐食が起こり、ブリスターと呼ばれる塗膜の膨れが成長する。このような塗膜下腐食は水膜下での電気化学反応であり、現象理解のためには腐食進行中における電極電位を測定することが有効である。本研究では、低合金鋼の塗膜下腐食機構を明らかにすることをと目的とし、従来より大気腐食の研究に用いられてきた走査型ケルビンプローブ(SKP)に加え、ケルビンフォース顕微鏡(KFM)を用いて、低合金鋼の塗膜下腐食進行中における電位分布測定を行った。
 試験片として、20µmのエポキシ塗装を施した炭素鋼と低合金鋼を用いた。試験片にはスクラッチを入れ下地鋼板を露出させた。この試験片に、希釈人工海水(CF付着量 0.1 gm-2 )を液膜厚さ約500µm となるように滴下し、定露点型乾湿繰り返し試験により塗膜下腐食を再現した。繰り返し試験の所定の サイクル終了後に、外観撮影とSKP及びKFMによる電位分布測定を行った。また、下塗り塗料に10µm ジンクリッチ塗装を施した塗装低合金鋼に関しても同様の試験を行い、塗膜下腐食進行へのジンクリッチ塗装の影響を調査した。
 乾湿繰り返し12サイクル終了後にすべての試料において塗膜の変色と膨れ が観察され、塗膜下腐食が進行していることが確認され、この塗膜下腐食の発生に応じて、疵部における腐食電位は貴側にシフトした。乾湿サイクルを繰り返すに連れ塗膜の膨れは徐々に拡大し、その膨れの拡大が大きい場合には腐食電位は貴側に、拡大が停滞している場合には腐食電位は卑側に推移する傾向が見られた。またジンクリッチ塗装を下塗りに施した普通鋼では、疵部における腐食電位は卑側に推移し、膨れの拡大は大きく抑制された。この結果より、ジンクリッチ塗装を施した鋼板では、亜鉛粒子の犠牲防食作用により塗膜下腐食が抑制されると考えられる。
 塗膜下腐食初期の膨れをKFMで観察す ると、膨れ直上と比べ、膨れから約100µm離れた箇所では局所的に低い電位を示す部分が広かった。KFMは疵部ではなく塗膜上における表面電位を測定しており、低い電位を示す部分では電気化学反応が進行していると推測されるため、この結果は塗膜下腐食の進行中の電位分布を捉えていると思われる。塗膜下腐食部のKFM像は、数µmの範囲においても電位分布があることを示唆しており、KFMは膨れの先端の腐食の進行過程を調査する有効なツールになり得ることが示された。

英文

 The progress of underfilm corrosion on carbon steels and weathering steels under the cyclic wet-dry corrosion tests was analyzed by a Scanning Kelvin Probe (SKP) and a Kelvin probe Force Microscope (KFM). The corrosion potentials at the scratch parts of steels by SKP shifted in the noble direction with the onset and progress of underfilm corrosion. The galvanic protection by Zn worked and decreased the corrosion potential of steels containing the Zinc-rich paint. A KFM image of epoxy coated carbon steel at a region 100µm distant from a blister exhibited a micro-scale potential distribution. KFM can be effective tool for the measurement of potential distribution of coated steel under the progress of underfilm corrosion.

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