第73回 スガウェザリング学術講演会

本年度も、コロナウイルス感染拡大の影響を鑑み、Web開催(ライブ配信)といたしました。今回は、406名の方々に参加登録頂き、盛況のうちに無事終了することができました。ご聴講頂いた皆様をはじめ関係の皆様に厚く御礼申し上げます。これからもウェザリング技術にたずさわる皆様のお役に立つ情報を発信し続けて参りますので、引き続きご支援の程何卒よろしくお願い申し上げます。

 

  スガ試験機 新宿本社(NSホール)での配信風景

 

開催日時 2022年11月25日(金)  10:00~14:35
配信方法 ライブ配信
テ ー マ ウェザリング研究の成果発表と最新情報
後 援 文部科学省
協 賛 (一社)軽金属製品協会(公社)高分子学会(一社)色材協会
(公社)自動車技術会 ステンレス協会(一社)繊維学会
(一財)日本ウエザリングテストセンター(一社)日本鋼構造協会
(一社)日本ゴム協会(一社)日本塗料工業会 日本プラスチック工業連盟
(一社)表面技術協会(公社)腐食防食学会 スガ試験機㈱
主 催 (公財)スガウェザリング技術振興財団
要旨集 要旨集ご購入はこちら

ご挨拶

須賀茂雄スガウェザリング技術振興財団 
理事長 
本日はお忙しい中、ご参加頂き、誠にありがとうございます。 本講演会は今回で3回連続のWeb開催となります。新型コロナウイルスの現状を考慮し、今回もWebによる開催とさせて頂きました。
この数年来、世界は新型コロナウイルスや自然災害などの猛威に見舞われ、産業界では未曽有の資材不足と価格高騰、食糧問題やエネルギー問題など、これまでに経験したことのない事態に陥っています。今年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、未だ終息に至らず、戦禍の中、数多くの尊い命が奪われ、美しい街並みや自然が破壊されていく様は大変痛ましい限りであります。一方、世界中で、地球規模の課題を解決するために、“SDGs”の取り組みが進められていると報じられています。混とんとした世界情勢であるからこそ、私たちは次の世代のために“今、自らができることに真摯に取り組む”、この姿勢を大事にしなければならないと考えます。本日は、当財団の表彰・助成事業において受賞・研究助成を受けられた研究者に、そのご研究成果をご発表頂きます。さらに世界的な自動車メーカーの研究者にその取組みをお話し頂きます。本日の講演会が、皆様の更なるウェザリング研究推進の糧となることを願って、私の開会の挨拶とさせて頂きます。

講演内容

岩瀬由佳  一般財団法人化学物質評価研究機構

低温下で生じるゴムのオゾン劣化メカニズム
(第40回スガウェザリング財団賞表彰 科学技術功労賞受賞)

ゴムのオゾン劣化は典型的な化学反応であるため、低温下では一般的にオゾンクラックの発生は抑制される。しかし、オゾン劣化防止剤が配合されたゴムの場合、高温下で高い耐オゾン性が確認されたゴムであっても、低温下でオゾンクラックが発生するケースがある。低温下で特異的に生じるゴムのオゾン劣化現象、及びオゾン劣化メカニズムについて調査した結果を解説した。

下井信浩  秋田県立大学

圧電素子を用いた動的・静的センサによる雪崩と落石の計測
(第40回スガウェザリング財団賞表彰 技術功労賞受賞)

気象条件によっては、急斜面に積層した雪や土砂が原因で雪崩や落石を発生させることがある。このような雪崩や落石は、対策として設置された防雪柵に到達する。このフェンスが崩壊した場合は、交通が完全に遮断される。そのため、雪崩や落石の発生予測は重要であるが、その計測は難しいとされている。本講演では、この問題を解決するため、雪崩や落石による防御フェンスの破壊リスクを計測することで、危険度予測を評価する手法について解説した。

池上和志  桐蔭横浜大学

ペロブスカイト素子の光電変換素子の用途展開と熱及び放射線耐久性評価の取組
(第38回研究助成 研究成果発表)

ヨウ化鉛系ペロブスカイト化合物は、フレキシブル基板へ印刷方式で作製する高効率太陽電池への応用が注目されている。一方、これらの化合物の放射線に対する高い耐久性も明らかとなり、X線センサーならびに宇宙利用に関する研究も進んでいる。ペロブスカイト光電変換素子の研究背景から、応用に向けた課題について解説した。

斎藤英純 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所

有機系太陽電池の耐久性評価技術の開発
(第38回研究助成 研究成果発表)

近年、小型IT機器の電源として有機太陽電池が注目されている。有機太陽電池は低照度でも発電能力が低下しにくく、塗布工程で製造されるため小面積でもモジュール化が容易といった特徴がある反面、シリコン太陽電池に比べて電圧変化時の電流応答が遅いタイプが多い。本研究では、それぞれのデバイスの遅れに対応し、定常値を自動判別するアルゴリズムを組み込んだ評価プログラムを開発し、耐久性評価への展開も含めた検討をおこなった。

長谷川和哉  スガ試験機株式会社

次期改正ISO 9227の技術的変更点

現在改正作業が進められているISO 9227(塩水噴霧試験)第5版について、現行の第4版から改正される技術変更点を中心に解説した。塩水噴霧試験は腐食促進試験の基本として、ISO以外にもIECやASTM,JISなどの規格にもわずかな差はあるが採用されている試験方法である。塩水噴霧試験の代表的な規格であるISO 9227の改正は、他の規格においても重要である。

月森隆雄 トヨタ自動車株式会社

自動車用外装塗装の耐候性(特別講演)

自動車用外装塗膜は自然環境下において、熱、水、紫外線の複合した環境にさらされており、非常に厳しい負荷を受けている。それらを評価するために自動車メーカーでは自然環境を解析、試験法に落としつつ、より市場相関の高い評価法を検討し続けている。本講演では自動車外装塗装の耐候性及び、過去から現在に至る評価法の進歩を解説した。

(敬称略)

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